紀伊半島の環境保と地域持続性ネットワーク 紀伊・環境保全&持続性研究所
連絡先:kiikankyo@zc.ztv.ne.jp 
ホーム メールマガジン リンク集 サイトマップ 更新情報 研究所

 

  インターネット産直を考える

  インターネットが普及する前から産直(ここでは産地直送の意味で用いる)は行われていた。産直で扱われる商品は、安全性を重視する消費者が購入を希望するような有機農産物や特別栽培農産物、地域の特産物、一般店では販売していない農産物や加工品、味や品質が高く評価された商品など様々である。消費者は、身近な店では入手できない上記のようなものを、送料を含めて比較的高い価格にもかかわらず産直を利用して購入している。従来から産直における通信手段としては、電話、ファックス、郵便が利用されている。消費者は、個人的に、あるいはグループとして産直を利用している。

 
それでは、インターネット産直は、従来の産直とどこが違うのだろうか。実際に、インターネット産直を行っている冨田きよむ氏は、その著書「農家のインターネット産直」の中で、「私達が目指すインターネット産直は決して特別なものではない。パソコンは、電話やファックスやハガキと同じ通信の道具でしかない。ただ、今までの道具と違って、はるかに安い経費で、はるかに多くの情報を、はるかに短い時間でやりとりできる。インターネットの本質はコミュニケーションだ」とその意義を明確に捉えている。

 
インターネット産直を始める前にまず、従来型の産直でも売れる商品があるのかどうか、従来の通信手段でも消費者との信頼関係を築くコミュニケーションが取れるのかどうか、小規模にでも実施してみることが重要だろう。インターネットは、あくまでも通信手段の1つとして考えて、従来型の産直で手ごたえがあれば、インターネット産直を考えたらどうであろうか。口コミででも広がるような良い商品が必要だ。

 
インターネット産直のメリット
を改めて整理してみたい。次のような内容は、あくまでも販売が軌道に乗った場合の可能性について述べたものである。

(1)産地直売が出来ないような地理的社会的条件であっても、農家自身が有利に販売できる。

(2)全国の人に商品を紹介でき、有利に販売できる。

(3)農家自身が生産と販売を行うので、消費者の意向をよく把握できる。
(4)農家の情報活動が活発になり、やる気が引き出される。

(5)多くの情報を消費者に伝えられるので、商品に付随した情報や生産環境などについても伝えられる。
(6)商品以外の周辺環境、農家の生活等、消費者が興味を持つ事柄も併せて伝えられ、ファンになってもらえる。

(7)過疎地帯は高速通信回線の普及が不十分なところが多いものの、インターネット接続は可能であるので、このような地域でも産直が可能であり、農家経営の改善に役立つ。

 一方、インターネット産直を実施する際の農家の負担について整理してみたい。

(1)パソコンとソフトの購入、インターネット環境の構築、ホームページ作成と公開後の維持(接続業者等)に費用がかかる。

(2)パソコンの使用法、ホームページの作り方などの勉強が必要であり、また、公開後に更新を繰り返す必要があり、このための時間がかかる。

(3)ホームページを立ち上げても、宣伝効果があがらなかったり、売れなかったりする場合がある。

 
インターネット産直で収入を増やすには、開設したホームページを多くの人に見てもらい(アクセス数を増やす)、ホームページへの訪問と購入のリピーターになってもらい、ファンになってもらうことが大切だ。大手のインターネット・ショッピングモールへの出店やネット販売サイトへの委託などの方法がある。しかし、これらのサイトへの集客数は多いが、登録されているホームページ自体が非常に多く、自分のホームページを訪れてくれるかどうかは別問題である。また、出店料などが月1万数千円から数万円というところもあり、販売収入が出店料を超えてくれればよいが、初めてホームページを手がける農家にとってはハードルが高いのが実情である。

 上記の冨田氏は、やる気の十分にあるインターネット産直農家を束ねて「元気ネット」を立ち上げている。この場合、内部的に更新頻度などについて厳しい条件を付けて、サイトの活性を維持している。また、ホームページには農家ならではの情報を掲載し、更新を怠らず、しょっちゅう情報発信をして、消費者の賛同と関心を得ながら進めることの重要性が強調されている。さらに、ホームページとともに、電子メールを活用することの重要性についても述ている。

 環境面での問題について、 ホームページで発信する農家は、農産物だけでなく、農家のくらしぶりや農作業の模様、環境保全型農業への取り組みなど、環境負荷軽減や安全性向上に努力する自らの姿を発信することが、消費者に支持される基盤となるので、インターネット産直が環境負荷軽減に繋がる可能性は大きい。

 
一方、前号のメールマガジンの「地産地消を考える」で触れたように、地産地消と比べると産直は輸送距離が長くなり、輸送に伴う炭酸ガス排出量の増加など、
環境負荷を増大させることになる。しかし、小口の産直物品は、定期的に運行されている大量輸送手段に他の荷物と一緒に乗せることで、環境負荷の増加を抑制することができるとも考えられる。

 農家のインターネット産直を伸ばしていく上での今後の課題は
、農村(過疎)地域の農家が、パソコン・インターネット環境の構築、パソコン技術の習得、ホームページ作成などを行うに際して、低コストのサービスを受けやすくすることであろう。そのためには、地方自治体などの後援によるパソコン教室や、地域でのパソコン関連のコミュニティービジネスの振興と、これらによる農家サポートが必要であろう。

 また、農家がホームページを立ち上げた時に、ホームページへの訪問(アクセス)がなかなか増えないという問題がある。これに対しては、個人的に時間をかけてアクセスを増やしていければ良いが、地域的に産直のウエブサイトを開設して育て、そこにホームペを作成した農家が低コストで参加できるようにすることも重要であろう。

 以上の技術的な問題とは別に、個々の農家や地域が産直物品として魅力ある商品をいかに創り出していくかが大きな課題である。このためには、自分達の地域の伝統と特徴を再発見しながら、地域の同好の士でグループを作って研究していくことも必要であろう。

参考文献
 

「地域の環境を守り活かす」へ 
「ホーム」へ